建築のまえに

Corb [コルブ] 一周遅れの建築と人の話

2017/09

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100530 一望監視所

ジェレミ・ベンサム さんといえば「最大多数の最大幸福」という言葉で知られている功利主義者ですが、その才能は多岐に及び、刑務所の設計をしたこともご存じの方が多いと思います。

彼の考えた建物は、円形に配置された独房が多層式看守塔に面するようになっていて、巧妙なブラインドにより収容者同士は、互いを見ることが出来ないが、看守からはすべての収容者を監視することが出来るもので、パノプティコン(一望監視所)と呼ばれました。

        180px-Panopticon.jpg

この大発明は、良いことにも悪いことにも利用される可能性を持っていて、ミシェル・フーコーさんは「監獄の誕生」の中で、現代社会の権力による一方的な支配構造を可視的に表したものとしてとりあげましたし、実際に同様の考え方によって造られた刑務所も多くありました。

1980年代になるとジョージ・オーウェルさんの小説の世界が、現実に起こりうるかもしれない近未来ではなく、すでにそれが身の回りに起こっているのではないかということを危惧するいろいろな方の文章と共に、パノプティコンも取り上げられることもありました。

現代社会に暮らす人たちが、互いに不信感を抱き、お互いが他人に無関心であったり、常に匿名の存在でいたいとか、人に見られるということに過敏であったりとか、当時の心配は現実になってしまったように思えてなりません。

また一望監視の考え方は、病院建築にも応用され、その代表的な建物としてアントニン・レーモンドさんらによって設計された、聖路加国際病院の旧館をあげることが出来るでしょう。

この建物のプランは十字架のかたちをしていて、その要の位置にナースステーションが有り、一ヵ所に居ながら同じフロアーの各病棟を見渡すことが出来るようになっています。

しかし、この建物の非凡さは、そのナースステーションの奥が、ガラス張りになっていて、病院の吹き抜けになったチャペルの、質素で美しいステンドグラスに浮かぶキリスト様の像が、看護婦さんの肩越しに見えることで、病める者が看護婦さんを通して神様の姿をつねに意識出来るという一直線の関係を作り上げていることでしょう。

この建物のような、ティンパニーが鳴り響く惑星直列のような神々しい平面を見ると、プランニングの大切さをあらためて実感しますが、刑務所と病院が似たような建築のタイプというのも大変興味のある話ではないでしょうか。

もしかしたら、他にも同じ建築タイプの建物や、社会の仕組みがあるかも知れませんから、まずは身の回りのものから探してみるのも面白いと思います。
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